軋み

軋んでいる

美を追求しきれない話

住んでいるマンションの正面に美容院があることに気づいたので行ってきた。軒下がやけに暗いので今まで全く気が付かなかった。LINEから予約できるお手軽さが良い。最後に髪を切ったのは6月辺りだった気がするが、その時は前に住んでいたマンションの隣にある理髪店で、耳出しますか?と聞かれてハイと返事をしたら本当に耳回りの毛をハサミで大雑把に切られただけで終わった。剪定作業かと思った。店の名前は覚えていない。これ以上の文句を続ける気力も湧いてこない。

LINEから予約するときに、2名のスタイリストから指名できる制度になっているようで、彼らの簡単な紹介があった。「最近ハマっているのはVALORANT」と「顔の形から似合うヘアスタイルを提案します」という文章がそれぞれ最初にあった。配信でしか見かけたことのないゲームの話をいきなり振られたら、と万が一のことを思うとこの2択は簡単だった。

店内はShape of YouみたいなジャンルのおしゃれなBGMが流れていた。美容院にはよくある感じだ。今まで見てきた店と違ったのは、鏡と反対側の壁に大きいモニターが設置されていて、そこに海外ドラマが映っているという点。吹き替え版なので字幕も付いている。曲と映像と文字で美容院というスペースに情報が溢れている。どんな感じにしますか?と手にヘアカタログを渡される、また一つ情報が増えた。ベリーショートのページを開くとみんな精悍な顔つきをしている。多分ベリーショートじゃなくてもそうなのだろう。

髪を切るために眼鏡を外すと、全く外の世界のことが分からなくなってしまう。近眼で、視力も0.1を切っていると、あらゆるものがモザイクでしか認識できない。家から出たときに眼鏡を外す瞬間がほとんどない中で、髪を切るシチュエーションになるとどうしても眼鏡を外さざるを得なくなる。鏡映しになった海外ドラマは確かアジア系の俳優が出ていたはずだが、もう何もかもが近視の中に滲んでしまった。家の中ならともかく、外となると視覚に頼れない状況がとにかく怖いので、髪を切られている間はいつも目をつぶっている。

しばらくして、眼鏡を渡されて鏡を見てみると、リクエストに沿った髪型になっていた。床屋と美容院を3:1くらいで利用しているが、美容院のときにはほぼ毎回流石美容院だなあと思う。カットとシャンプーで4000円くらいだった。髪の量がかなり減って、自分の頭のデカさがより強調された気がする。これもいつものこと。