軋み

軋んでいる

3枚掛けの夢

推理ゲームの主人公のような視点だった。NPCと思しき人物から情報を聞き出して、手掛かりになるようなものを探すためにポイントからポイントへと移動する最中に家のすぐそばを通りかかったのだが、そこはメダルゲームの数々が置いてある絶好の穴場なのだった。事件など迷宮入りでも構わない、今すぐメダルゲームに取り掛かってジャックポットを連発して大量のメダルの中に埋もれてしまいたい、と今までダイアログとバストアップの人物と背景だけで構成されていた視界が、突如一人称視点のリアルワールドに切り替わる。あの信号を渡れば、目的地に着くのだ。青に変わったとたんに早歩きでドアをくぐり、薄暗い店内を進んでいく。途中にあったガラス張りで丸見えの個室トイレは夢特有のノイズだろう、ようやく待望のメダルゲームコーナーにたどり着いたところで目が覚めた。

起きてからもしばらくは、部屋を暗くしたままにメダルゲームのことを考え続けていた。家のそばにそんなクラシックなゲームセンターってあったっけ。もう10年以上もメダルゲームなるものに触れていないと思う。地元のショッピングモールとスーパーの中間みたいなよく分からない店舗の2階にはいろんなメダルゲームがあった。ハローキティのポップコーンマシンもあった気がする。そこで、パワプロのスロットのようなもので30枚当てたことがある。それ以外の大勝ちの記憶は無い。いい歳の大人になったし、多少の金の無駄遣いはいいかもしれないと思い、適当にスマホで「メダルゲーム」「ゲームセンター」と入れて調べてみるが、夢で見たように徒歩で行ける近場にはそのような場所は無かった。この唐突に湧いてきたこのメダルゲーム欲はどうすればいいのだろうか……とがんばれゴエモンのやつ(ゴエモンが小判を投げて敵や宝物に当てるもの)の動画を何件か見た。がんばれゴエモンの本編のことは知らないので、メダルゲームを経由して得た知識しかない。小判を投げて、敵が倒れる。メダルを追加すると小判が大きくなり、得られるリターンも大きくなる。ゲーム性がそこで終わっている。動画を見て概ね満足してしまった、夢の自分が熱中していた理由がよく分からない。