軋み

軋んでいる

ヒットメーカー兼ホームメーカー

栗山巧選手が2000本安打記念に家をプロデュースしている。コンセプトは「戦い続ける人のためのリラックスできるスペース」。うろ覚え。明らかに専門外だ。事実プロ野球選手が家を担ぐ、というのは業界初らしい。どの業界なのかこの場合イマイチ伝わりにくい気がする。

思い出したのは実家には栗山巧モデルのメイプルバットがある、ということだった。買ったのはもうずいぶん前の話だ。当時は別に野球を熱心にやっていたわけでもない。ただ振り回すバットが欲しくて地元のスポーツデポにふらりと立ち寄って、そこで買ったのだった。まるで犯行動機のようだ。ブランド製の硬式のバットと言えども木製なせいか、金属バットと比べてかなり安かったのを覚えている。かつてのドラゴンズの監督だった落合博光氏のコラムで、「最近の選手はみんな軽いバットを使う」という文句をこぼしていた。自分は今でも落合氏のことを信じている質の人間なので、920グラムと重めのバットを手に取った。それが栗山巧モデルのバットだった。色も茶色とクリーム色を混ぜたような色で綺麗に見える。形状も中ほどからヘッドにかけて概ね均一な太さで扱いやすそうだ。重心がグリップにやや近めにあるので、握ったときに感じる重さはそこまででもなかった。まあフォームを固めて振ってみると、振られているのはむしろこっちだった。

実際にそのバットを振った回数は、3桁と少しくらいだ。ボールをミートした回数はゼロ。バッティングセンターにも持って行かずに、据え置きの金属バットを使った。バットを振り回すために買ったバットは本当に、ただ振り回すだけでその役目を終えようとしている。落合氏のコラムで「バットが梅雨時の湿気で重さが変わり続ける」という話もあったが、あのバットはもう920グラムの重量を保ってはいないだろうな。

栗山巧選手がプロデュースしている家は5棟限定で、先着1名の購入者には栗山巧選手が直接訪問にくるのだという。プロの世界で2000本を達成する選手の家というのが、凡そ普通に生きている人にとって手を出しやすいものとは思えないので、この数とサービスは妥当だろう。家と言えば一生モノの買い物なので、バットの様に放置されることはまずないだろうが、何となくこのニュースを見て数年前の衝動買いのことを思い出した。